パッド印刷とは
パッド印刷とは、版上のインキを弾性のあるパッドで取り、曲面や凹凸のある製品へ転写して文字や柄を印刷する加工方法です。
定義と概要
パッド印刷は、凹版に入れたインキをシリコーンなどの弾性パッドで受け取り、被印刷物へ押し当てて絵柄を移す印刷方法です。パッドの変形を利用するため、平面だけでなく、ゆるい曲面や段差のある部分にも印刷しやすい特徴があります。
アパレル製品そのものへの大面積印刷よりも、ボタン、ファスナーの引手、バックル、コードストッパー、ネーム用の付属など、小さく立体的な部材へのロゴや品番表示に用いられます。「タンポ印刷」は一般に同じ加工を指す呼び方です。
製品づくりでの位置づけ
パッド印刷は、付属を成形・表面処理した後、縫製や組み立ての前に行うことが多い二次加工です。印刷済みの付属を縫製工場へ供給するため、付属の手配時点で印刷仕様を確定し、生産計画に加工期間と検品工程を組み込みます。
衣料の身頃など平らで広い面に柄を表現するプリントとは、対象物と得意な表現が異なります。パッド印刷は小さなロゴ、記号、文字に適しますが、細密な多色グラデーションや広いベタ面は、製品形状やインキとの相性を含めて別方式を検討します。
発注時に決める事項
発注時は、対象部材の材質、色、表面状態、印刷位置、向き、印刷範囲を実物または図面で共有します。曲率、凹凸、肉厚の変化、パーティングラインなど成形上の境目は、パッドの密着や絵柄の見え方に影響するため、位置指定では基準点を明確にします。
入稿データは原則として版下に適した輪郭データを用意し、文字の最小線幅や抜きの大きさは事前に加工先へ確認します。色数ごとに版と印刷工程が必要になる場合があるため、色指定、重ね順、特色の可否、見本承認の方法も仕様書に記載します。
- 対象部材の現物、材質表示、表面処理の有無
- 印刷色、色見本、ロゴや文字の版下データ
- 印刷位置の寸法、基準点、表裏と向き
- 数量、納期、予備分の要否
- 量産前サンプルで確認する品質基準
品質確認と注意点
量産前には、実際の部材と同じ材質・表面状態で試作し、位置、色調、欠け、にじみ、かすれ、版ずれを確認します。光沢面、凹凸面、軟質樹脂、塗装面などではインキの密着性が変わるため、見た目だけでなく使用条件に応じた耐摩擦性や耐水性も確認します。
ロゴの細線、極小文字、広いベタ面は、インキ量やパッドの当たり方によって再現性が変動しやすい部分です。印刷面に縫製時の圧力や他部材との接触が加わる場合は、組み立て後にも擦れ、転写、剥がれがないかを確認し、許容範囲を事前に合意します。
似ている用語との違い
スクリーンプリントは、版の開口部からインキを通して平面へ印刷する方式で、衣料や生地の比較的広い面に適しています。これに対しパッド印刷は、弾性パッドを介して転写するため、小型部材の曲面や凹凸面への印刷に向きます。
刻印は、圧力や熱などで文字・模様を凹凸として付ける加工であり、一般にインキを転写するパッド印刷とは仕上がりが異なります。印刷と刻印を併用する場合もあるため、色表現の有無と凹凸の有無を分けて仕様化することが重要です。
よくある質問
パッド印刷はどのような素材にできますか。
樹脂、金属、塗装面などに用いられますが、適否は素材、表面処理、形状、使用環境によって異なります。特に柔らかい樹脂や表面に離型剤、油分、凹凸がある部材では密着不良が起こることがあります。実部材で試作し、必要な耐久試験を確認することが大切です。
パッド印刷で細かいロゴや小さな文字は再現できますか。
比較的細かなロゴや文字にも利用できますが、線の細さ、文字の大きさ、部材の曲面、インキの色と下地色によって視認性や再現性は変わります。輪郭データを提出したうえで試作を行い、つぶれ、欠け、かすれが許容範囲にあるかを量産前に確認します。
量産時に印刷位置のずれを防ぐにはどうしますか。
部材を固定する治具と、位置を決める基準点が重要です。図面では端からの寸法だけでなく、表裏、上下、ロゴの向き、基準となる穴や角などを明記します。曲面上では見かけの位置も変わるため、正面から見た状態を示した承認見本を残しておくと確認しやすくなります。





