人権デューディリジェンスとは
人権デューディリジェンスとは、事業活動や取引先を通じて生じ得る人権への悪影響を特定し、防止・軽減し、対応状況を確認・説明する継続的な取組みです。
定義と位置付け
人権デューディリジェンスは、企業が自社、取引先、原料調達先などに関わる人権リスクを調べ、適切に対処するための手順です。リスクを一度確認して終えるのではなく、事業や調達先の変化に応じて見直します。
これは単独の認証、素材規格、または製品表示ではありません。各国・地域の法令、取引先の行動規範、国際的な人権尊重の考え方などを踏まえ、企業が実施する管理の枠組みを指します。
対象と基準の考え方
対象には、強制労働、児童労働、差別、労働安全衛生、適正な労働時間や報酬、結社の自由などが含まれます。生地や製品の品質リスクではなく、事業によって影響を受ける人の権利に着目する点が重要です。
確認の優先順位は、企業にとっての評判や損失の大きさだけでなく、影響を受ける人にとっての深刻さ、影響の広がり、回復の難しさなどを考慮して決めます。取引階層が深いほど情報収集が難しい場合もあります。
- 自社の雇用・労務管理
- 縫製工場、染色加工場などの生産現場
- 紡績、原料生産など上流の供給網
- 派遣労働者、移住労働者など立場が弱くなりやすい労働者
生地仕入れと製品づくりでの確認
生地を仕入れる際は、素材名や原産国だけで判断せず、供給者が人権方針を持つか、工場や工程をどこまで把握しているか、問題を知らせる相談窓口や是正手順があるかを確認します。必要な確認範囲は、取引規模や調達地域、工程によって異なります。
製品づくりでは、納期や価格の設定が過度な残業、無理な再委託、労働安全上の負担につながらないようにします。発注変更、支払条件、品質基準も生産現場への影響を持つため、購買・企画・生産管理が連携して管理することが求められます。
リスクが見つかった場合は、直ちに取引を停止することだけが対応ではありません。影響を受ける人の安全を優先し、供給者との対話、改善計画、進捗確認、必要に応じた救済への協力を検討します。
表示と証明書の注意点
人権デューディリジェンスを実施していること自体は、生地の性能や安全性を示す認証ではありません。そのため、下げ札、商品ページ、商談資料で人権配慮を訴求する際は、確認対象の範囲、根拠資料、実施時点を明確にする必要があります。
第三者認証や監査報告書、自己申告書は、確認のための資料になり得ますが、それだけで供給網全体に人権上の問題がないことを保証するものではありません。証明書の対象工程、対象ロット、有効期限、管理連鎖の範囲を確認します。
環境配慮やリサイクル材に関する認証は、人権デューディリジェンスと目的や対象が異なります。複数の認証・情報を用いる場合も、それぞれが何を確認しているのかを分けて説明することが大切です。
よくある質問
人権デューディリジェンスは認証ですか。
認証ではありません。企業が人権への悪影響を特定し、防止・軽減、是正、情報開示を行うための継続的な取組みです。監査報告書や各種認証は確認資料になり得ますが、それらを取得しただけで取組みが完了するわけではありません。
生地の仕入れ時には何を確認すればよいですか。
認証生地なら人権リスクの確認は不要ですか。
不要にはなりません。認証には対象とする素材、工程、管理項目に範囲があります。人権デューディリジェンスでは、自社の発注や取引条件による影響も含めて確認します。認証書は対象範囲を確かめたうえで補完的な資料として扱います。





