先練り・後練りとは
先練り・後練りとは、絹糸に含まれるセリシンを精練で除く時期を、製織前と製織後に分けて示す絹織物の加工方法です。
定義と概要
先練りは、生糸を精練してセリシンを除いた後に糸染めや製織を行う方法です。後練りは、生糸のセリシンを残して織り、織物になってから精練する方法です。精練は、絹の表面を覆うセリシンを取り除く工程を指します。
どちらも主に絹織物に用いる工程上の呼び分けであり、織組織の名称ではありません。実際の風合いや外観は、糸の太さ、撚り、織密度、染色、整理加工によっても変わるため、先練り・後練りだけで一律には決まりません。
風合いと見た目の特徴
先練りでは、製織前にセリシンを除くため、糸本来のやわらかさやしなやかさを生かしやすい傾向があります。一方で、精練済みの糸は表面が滑りやすく、製織時の扱いには原料や工程に応じた配慮が必要です。
後練りでは、セリシンが製織中の糸を保護し、糸同士のまとまりを保つ役割をします。織り上げ後に精練すると、セリシンが除かれることによる収縮や組織の締まりが生じ、比較的充実感のある地合いとなる場合があります。
主な用途
先練り・後練りは、羽二重、デシン、ちりめんなどをはじめとする絹織物で、求める風合いに合わせて検討されます。ブラウス、ワンピース、スカーフ、和装品、裏地、ドレスなど、絹の光沢やドレープ性を生かすアイテムに用いられます。
薄地でやわらかな表情や軽い着心地を重視する場合は先練りの特性が参照されます。組織感、地合いの充実感、精練後の変化を意図して設計する場合は、後練りの工程が選択肢となります。
選び方と取り扱いの注意点
生地を選定する際は、先練り・後練りの区分だけでなく、精練後の生地幅、目付、縮率、洗濯表示、堅牢度を確認します。後練り品は精練工程を経た状態での規格を基準にし、量産時には見本との風合いや寸法の差を確認することが重要です。
絹は水分、摩擦、熱、アルカリ性洗剤の影響を受けやすい素材です。家庭洗濯の可否は製品の洗濯表示に従い、縫製では針跡、縫い縮み、縫い目のパッカリングに注意します。裁断前には必要に応じて放反し、地の目を整えて扱います。
- 量産前に洗濯試験またはドライクリーニング試験を行い、寸法変化を確認します。
- 芯地や副資材を使用する場合は、表地との収縮差や接着条件を事前に検証します。
- アイロンは当て布を用い、過度な温度や蒸気によるアタリ、輪ジミに注意します。
似ている用語との違い
先染め・後染めは、糸の段階で染めるか、織物にしてから染めるかを示す染色時期の用語です。これに対し先練り・後練りは、絹のセリシンを除く精練を製織の前後どちらで行うかを示します。
精練は、油分や不純物などを取り除く一般的な前処理にも用いられる言葉ですが、先練り・後練りは特に絹のセリシンと製織工程の関係を説明する際に使われます。





