手捺染とは
手捺染とは、色ごとに作成した版を用い、職人が生地へ手作業で捺染糊を刷り込んで柄を表現するスクリーン捺染の一種です。
定義と概要
手捺染は、柄に合わせたスクリーン版を生地の上に置き、捺染糊をスキージーで押し出して色を付ける加工です。多色柄では色ごとに版を替え、乾燥や蒸し、水洗いなどを経て仕上げます。
生地の組織や素材を指す言葉ではなく、柄を付ける加工方法です。使用する染料・顔料や生地の繊維によって、発色、風合い、洗濯時の性質は異なります。
特徴と表現
人の手で版を送って刷るため、柄の位置や染料の付き方にわずかな揺らぎが現れることがあります。この不均一さは、手仕事らしい表情や奥行きとして活用されますが、均一性を重視する企画では事前確認が必要です。
色ごとに版を使うため、色数の多い柄や精密な柄は工程が増えます。一方で、ベタ面のしっかりした発色や、版による輪郭が生きる柄、繰り返し柄の表現に用いられます。
- スクリーンプリントは版を使う印刷・捺染の総称で、手捺染はその版送りや刷り工程を人手で行う方法です。
- インクジェットプリントはデータから直接インクを吐出する方法であり、版を用いる手捺染とは工程と表現特性が異なります。
- 顔料プリントは使用する色材に着目した名称です。手捺染で顔料を使う場合もありますが、両者は同義ではありません。
主な用途
シャツ、ブラウス、ワンピース、スカート、ストールなど、柄を主役にしたアイテムに用いられます。綿、リネン、レーヨンなどのほか、素材に適した色材と前処理を選ぶことで、さまざまな生地に加工されます。
薄地の春夏物では軽やかな総柄やボタニカル柄に、通年・秋冬物では深い色調の幾何学柄や小紋柄などに用いられます。ただし、季節性は手捺染そのものではなく、基布の厚みや素材、柄によって決まります。
選び方と取り扱いの注意点
企画時は、実際の生地で作成した試験反やスワッチを確認し、色味、柄の位置、輪郭、裏面への抜け、色差を確認します。特に大柄やリピート柄は、製品の裁断位置によって見え方が変わるため、柄合わせの指示を仕様書に明記します。
洗濯による縮みは主に基布の素材や整理加工に左右されるため、プリント後の生地で縮率を確認します。色移り、退色、摩擦による色落ちの可能性は色材と加工条件で異なるため、洗濯堅牢度・摩擦堅牢度などを用途に応じて確認します。
縫製では、表面の擦れ、アイロンによるテカリや色調変化、縫いずれに注意します。濃色や顔料を用いたプリントでは、縫製工程中の摩擦や強いプレスで表面感が変化する場合があるため、端切れで工程試験を行うと安心です。
よくある質問
手捺染とスクリーンプリントの違いは何ですか。
スクリーンプリントは、スクリーン版を使って色を載せる加工全般を指します。手捺染はそのうち、版の送りや捺染糊の刷り込みを手作業で行う方法です。機械によるスクリーン捺染と比べ、表情に個体差が生じることがあります。
手捺染生地は家庭で洗濯できますか。
洗濯の可否は手捺染という加工名だけでは判断できません。基布の繊維、使用した染料・顔料、後加工により異なるため、製品の洗濯表示に従います。企画・生産時は、想定する洗濯方法で色落ち、移染、縮みを事前に確認します。





