経糸とは
経糸とは、織物の長さ方向(耳と平行な方向)に通っている糸です。織る前に必要な本数をそろえて織機に平行に張っておき、その間に緯糸を通して交差させることで生地が織られます。
定義と概要
経糸(たていと)は、織物の長さ方向に通っている糸です。「タテ糸」「たて糸」「縦糸」とも書きます。織る前に、生地の幅と密度に合わせた本数と長さをそろえてビームに巻き取り(整経)、織機に平行に張っておきます。張った経糸を上下に開き、その間に緯糸を 1 本ずつ通して交差させることで、生地が織られます。
生地の耳と平行な方向、つまり反物の長さ方向が経糸の方向です。裁断の基準になる地の目も、ふつうはこの方向に通します。
経糸に求められること
経糸は、織っている間ずっと張力を受け、織機の綜絖(そうこう)や筬(おさ)ともこすれ合います。そのため、切れにくく毛羽の少ない糸が選ばれやすく、綿などの紡績糸は製織の前に糊を付けて補強し、織り上がった後の糊抜きで落とします。毛羽の少ないコンパクト糸を経糸に使うと、表面のすっきりしたチノやブロードになります。
経糸は一度張ると、使い切るまで同じ糸で織り続けます。そのため、同じ経糸のまま緯糸の色や素材だけを替えて、色や表情の違う生地を織り分けることがよくあります。
生地の表情と機能への影響
経糸の素材・太さ・撚り・色は、生地の見た目と性質を左右します。朱子織のように経糸を多く表に出す組織では、経糸の光沢や色が表面の印象を決めます。経糸にフィラメント糸を使うと、なめらかな表面と落ち感が出やすくなります。
経糸に色の違う糸を並べるとストライプになり、緯糸にも並べるとチェックになります。経糸と緯糸の色を変えると、見る角度で色が変わるシャンブレーになります。シアサッカーのように、経糸の張力に差をつけて織ることで縞状の凹凸を出す生地もあります。
経糸の方向は伸びにくく、形が安定しやすい方向です。ただし、経糸にポリウレタンなどの伸縮性のある糸を使い、長さ方向に伸びるようにしたタテストレッチの生地もあります。
生地の仕様での表し方
生地の仕様では、糸の太さ(番手)と密度を経糸、緯糸の順に書くのが一般的です。たとえば綿のブロードの「40×40/133×72」は、経糸・緯糸とも 40 番手の糸で、1 インチ(2.54cm)あたり経糸が 133 本、緯糸が 72 本という意味です。経糸の密度は経密度(タテ密度)と呼びます。
経糸の本数は、生地の幅と経密度で決まります。広幅で高密度の生地では、数千本から 1 万本近くの経糸が並びます。
裁断・縫製での注意点
パターンは、地の目線を経糸の方向に合わせて置くのが基本です。耳が付いた状態で経糸の方向を確かめてから裁断します。地の目がずれると、着用や洗濯の後に脇線がねじれたり、ストライプが斜めに見えたりします。
洗濯や蒸気で縮む量は、経方向と緯方向で違うことがよくあります。用尺を決める前に、経方向と緯方向を分けて縮率を確かめます。経糸が切れたり張力が乱れたりすると、長さ方向のすじ(経筋)になって現れることがあるため、検反で確かめます。
似ている用語との違い
緯糸は、張った経糸の間に幅方向に通す糸です。経糸は先に織機に張る糸、緯糸は後から通す糸という、織り方の上での役割で呼び分けます。両方をまとめた説明は「経糸と緯糸」にあります。
ニットの経編(たてあみ)も、整経した多数の糸を長さ方向に送って編むため、その糸を経糸と呼びます。ただし経編では糸どうしがループでつながっていて、織物のように経糸と緯糸が交差する作りではありません。





