甲州織とは
甲州織とは、山梨県郡内地域を中心に生産される先染め織物の総称で、柄や光沢を生かし、スーツやジャケットなどの胴裏・袖裏に用いられることが多い裏地です。
定義と概要
甲州織は、山梨県の郡内地域を中心とする織物産地で生産される織物の呼称です。特定の繊維名や織組織名ではなく、産地性を示す名称であり、先染め糸による繊細な柄表現を特徴とするものが多くあります。
衣料用では、スーツ、ジャケット、コートなどの裏地に使われます。表地の内側に意匠性を加えるとともに、着脱時の滑りを整え、表地を直接肌や他の衣類と擦れにくくする役割を担います。
使う部位と役割
主な使用部位はジャケットやコートの胴裏、袖裏です。胴裏では見返しを開いた際の印象をつくり、袖裏では腕を通す際の滑りを補います。パンツの膝裏として用い、膝まわりの摩擦を抑える場合もあります。
総裏仕立てでは身頃全体の裏地として、背抜き仕立てでは前身頃や袖などの必要な部分に使用します。表地のハリや厚みを支えたり補強したりする材料ではないため、必要に応じて芯地などと役割を分けて設計します。
素材と種類
甲州織には、ポリエステルなどの合成繊維を用いたもののほか、キュプラ、レーヨン、シルクなどを用いたものがあります。繊維の種類、糸の太さ、密度、仕上げによって、滑り、吸湿性、光沢、落ち感は異なります。
柄はドビーやジャカードなどで表現され、無地調、小紋調、ストライプ調などがあります。甲州織は織り方を一つに限定する名称ではないため、組織や混用率、機能性は品番ごとに確認することが重要です。
選び方と注意点
表地との相性は、色、光沢、厚み、動き方を合わせて判断します。落ち感のある表地には軽く滑りのよい裏地を、しっかりした表地には仕立て映えを損ねない適度なハリの裏地を検討します。淡色や薄地の表地では、裏地の色柄が透けないかも確認します。
ストレッチ性のある表地には、裏地の伸びが不足すると着用時に引きつれやすくなります。ストレッチ裏地を選ぶ、または裏地にゆとりを設けるなど、パターンと素材の両面から検討します。着用試験では袖通し、背中や肘の可動域、静電気の発生も確認します。
- 表地より裏地の滑りが過度に強い場合は、着用時の安定感や縫製時の扱いやすさを確認します。
- 柄物は左右身頃や袖で柄の向き・見え方をそろえ、裁断用尺の増加も見込みます。
- 淡色表地には、裏地の濃色や強い柄が表側に影響しないか、実際に重ねて確認します。
縫製上の注意
滑りやすく薄い裏地は、裁断時にずれやすく、縫製時には送り差による波打ちや縫いずれが起こることがあります。裁断前に地の目を整え、必要に応じて押さえ圧、針、糸調子、送り量を試し、端部を安定させてから縫製します。
裏地には、表地の運動量を妨げないためのキセを入れることが一般的です。袖口、裾、ベンツ、見返し端などは、表地との長さ関係や縫い代の収まりを確認します。高温のアイロンは光沢変化やアタリの原因になり得るため、端切れで温度と当て布の条件を確認します。





